Project story #05

「信託業務×デジタルで新たなビジネス」にJoin

  • #デジタル

企業はSDGsを掲げ、社会課題へ取り組むと同時に、市場の縮小や、新たなニーズ拡大への対応として、大きな変化を求められています。企業から大切な資産を託され、運用して企業価値を高めるために尽力する信託銀行も例外ではありません。信託銀行の業務から見える社会課題に挑むため、これまでの業務で培ったノウハウとデジタルを活用した取り組みを紹介します。

どのようなプロジェクトに取り組んだか

信託銀行の業務から見える社会課題に
デジタル技術を活かした新ビジネスで挑む

Project Member

K.N

デジタル企画部
2011年入社
政治経済学部卒

T.A

デジタル企画部
2017年入社
商学部卒

※所属はインタビュー当時のものです

Cross Talk

投資機会の拡大に寄与する「Progmat(プログマ)」

「Progmat(プログマ)」はどのような背景から生まれたのでしょうか。

T.A近年、社会の動きが貯蓄から投資へシフトしつつあります。老後の生活資金への不安も手伝い、投資への関心が徐々に高まっている状況です。投資する人が増えると、おのずと投資対象も増え、取引にかかわる事務処理も膨大となることが予想されます。その際、上場している投資対象であれば、すでに日々の取引の仕組みが確立されているため、こうした事務処理も大きな問題とはなりません。そのため、私たちが今後フォーカスすべき投資対象は、上場することが難しい比較的小さな規模の資産や今まで個人投資家が投資対象にできなかった資産ということになります。

K.N上場していない資産を、証券化して投資家に届ける。あるいは、個人が投資しやすいように、小口化して小額投資が可能な仕組みを作ろうとすると、その裏で事務作業が煩雑となり、大きく作業量が増えます。事務作業量が増えるとそれに対応するためのコストが生じ、投資家利益の縮小や、そもそもその商品の提供ができないということが想定され、社会課題の一つになっています。

T.Aこうした課題を解決できないかと、社内にプロジェクトチームが立ち上がり実現したのが、「Progmat」というプラットフォームです。「Progmat」では、ブロックチェーン(分散型台帳技術)と、私たちが本来の業務で携わってきた信託機能の活用により、証券そのものを「セキュリティトークン」としてデジタル発行することで、証券の小口化・少額単位化を可能とします。さまざまな分野で市場が先細るなか、資金調達者と投資家の双方にとって大きなメリットとなり、投資の裾野を拡大するソリューションとして注目されています。

K.Nこうしたビジネスを三菱UFJ信託銀行が手掛ける意義ですが、単にブロックチェーンという技術を使ったサービスを立ち上げたということにとどまりません。信託銀行として、お客さまの財産を受託することや、投資商品を提供してきた経験・知識を活用し、プラットフォームからその上で流通する投資商品までをワンストップで提供できるという優位性にあると思っています。もともとこのプロジェクトにおいては社会課題の解決という使命もあります。そのため、「Progmat」を三菱UFJ信託銀行のみが独占使用するのではなく、信託業界における標準のインフラとして機能させるために、企業や業界の垣根を越えて、大手信託銀行3社と三井住友フィナンシャルグループ、SBI PTSホールディングス、JPX総研、NTTデータの全7社による合弁会社を設立し、一層充実させていく予定です。

社会課題と企業成長に同時に取り組む

「Progmat」はこれまでの投資スタイルをどのように変化させますか。

K.N「Progmat」を使うと、資金調達の手段が多様化して、多数の個人とつながることができるようになります。そのため、資金調達をしながらマーケティングにも同時に取り組めるというメリットがあります。出資者に対するインセンティブの権利や機能を有するユーティリティトークンを発行するなど、ファンマーケティングにも活用できます。

T.A例えば、鉄道沿線の不動産や商業施設などに投資を行うことで、その使用権やサービスを受ける権利を得られたら、気軽に投資する人も増えると思います。また、好きなスポーツチームを投資という形で応援したりと、不動産など特定の分野以外の事業法人様も、個人と接点を持って、資金調達や支援の声を受けながら事業を拡大していくチャンスが増えていくのではないでしょうか。

K.N「Progmat」は個人投資家の方にも多くのメリットをもたらします。今後は、高価なワインや絵画といった、それぞれ単体で上場させることがあり得ないようなものも投資対象となりうるわけです。そのため、格段に投資機会が多様化していくことが予想されます。そうなると自分自身が何に投資したいのか考えるきっかけになります。個人資産の半分が預貯金といわれているなかで、投資商品を多様化して投資機会を増やすことは、日本経済にも良い効果をもたらすでしょう。さらに私たちの今後のビジネス拡大という面でも、大きな成長の機会になると確信しています。

「Progmat」が生み出す新たな価値はどのようなものでしょう。

T.ASDGsが注目されていることからも、今後、企業が社会課題に取り組むことは急務で、MUFGのグループ全体としても経営目標に掲げています。「Progmat」には、直接的な投資効果のほか、間接的な効果もあると期待されています。

K.N例えば、地元の人に愛されているのに資金繰りが難しくて廃業を検討しているお店なども投資対象にできるわけですから、一人ひとりの投資は小さくても最終的に大きな力となります。地元ファンの皆さんからの応援によって、ますます魅力的な地域となり、街全体が豊かになっていく。そんなストーリーさえも描けるのではないでしょうか。

T.A実は私もK.NもFinTech(フィンテック)やデジタル分野の専門だったわけではありません。二人とも不動産業務を担当していたのですが、社内公募のジョブチャレンジ制度や異動によって「Progmat」のプロジェクトにかかわるようになりました。今は、業務の上流から下流までチーム内ですべて完結するという経験をとても貴重に感じています。

K.N「Progmat」という可能性を得たおかげで、このプラットフォームを使って何かできないかという、若手社員のアイデアやチャレンジが新たに生まれやすい土壌が整備されたと思います。また、新しい仕組みを構築する過程で、法整備のために金融庁や財務局と連携したり、業界を横断して意見集約を図ったりしたのですが、これはスタートアップ企業ではなかなか難しいことだと思います。これまで三菱UFJ信託銀行が、幅広い信託業務を通して築いてきた接点と信頼関係があってこそ実現できた新事業なので、この環境の強みを存分に活かし、今後もプロジェクトを発展させていきたいです。